夫とは19歳の時に出会い、23歳で結婚した。
最初からちょっとめんどくさい人だった。でも、すごく愛されていると思っていた。
しっかりしてるね、と言われ続けた私の、本当は甘えたくてしかたなかった部分を、初めてちゃんとわかってくれた人だった。
私は嬉しかった。
やっとやっと、安心して甘えられる人ができたと思った。
結婚してわりとすぐ、子供ができた。
泣いて喜んでくれたこと、難産で、やっと生まれるぞ、てときにも泣いてくれたこと、きっと一生忘れないだろう。
夫は、仕事が原因で15年ほど前から心を病んだ。
私のサポートは、もしかしたら及第点ではなかったのかもしれないけれど、私は私でがんばってきた。
心を病んだといっても、薬である程度落ち着いていたし、いろいろとうっとしい性格ではあったけれど、家族を大事にする人だった。
イベントは思い切り楽しんだ。私の誕生日や母の日は、子供たちをひっぱっていつもあたたかい演出をしてくれた。
子供たちの誕生日や、クリスマス、何かあったとき、いろんな愛を見せてくれていたことは、それは嘘じゃないと思う。
そんな夫が、どこから、本格的に間違えてしまったんだろう。
今からもう4年前になるけれど、息子が高校に行けなくなった。時をほぼ同じくして、夫の上司が変わり、夫は本格的に鬱状態になりつつあった。
正直私は、息子のことで手いっぱいだった。
苦しんでいる息子を、なんとか助けたかった。それは、息子の話にとにかく耳を傾け、息子の調子を観察しながら、寄り添ったり引っ張り上げたりとなかなかの重労働であると同時に、今までの自分とまっこうから向き合って、間違いを認めて、新しいものを構築していく作業だった。
そして、父であれば、夫であれば、自分のことよりも子供のことを助けたいと思ってほしい、頑張る私を助けてほしい、そう、思ってしまった。
鬱になりかけの人にはつらかったと思う。
でも、私の体も心も、一つしかなかった。
息子が通信制の高校に無事に転校し、落ち着いたのもつかの間、2年前に夫はとうとう、およそ4か月間休職した。
私は私なりに、一生懸命夫に寄り添った。
会社や上司と連絡をとり、病院にも一緒にいき、そして息子も娘も、本当にさりげなく夫に寄り添ってくれた。
休職している間に、無趣味だった夫は、インスタグラムを始めた。
本当に数少ない友達と飲みにも行くようになった。しかも泊りがけで。
インスタグラムは、自撮りのチャラい感じで、コメント欄でも女の人と仲良くコメントを交わしてたりしていて本当は少しいやだったけれど、趣味のことで心が明るくなるのなら、と思っていた。
飲みに行くのも、お金がかかっていやだったけれど、そういう息抜きがないと、復職したてで仕事頑張れないだろうな、と思っていた。
夫の浮気相手は、インスタで知り合った女だった。
泊りがけの飲みはお友達ではなく、女と会っていたのだった。
私は、全然、疑っていなかった。
夫が私以外の人を好きになることなんてないと、たかをくくっていたんだ。
浮気を告白されたのは、20年目の結婚記念日に、女と会っていた、翌日のことだった。