19歳の息子は、もともと夫のことをよく思っていなかった。
小さい頃は、よく一緒に遊んだり出かけたりして、夫は息子をとてもかわいがっていたけれど、ここ数年の夫の態度(偉そうに言うくせにやってることはいいかげんとか、人、特に私、を馬鹿にするようなことをしょっちゅう言うことなどなど)に、
たいしたことないやつやな
と思っていたし、家族でダントツにめんどくさい性格の夫に対し、みんなで気をつかわなければならないことや、してもらっていることに感謝しない様子にはほとほとあきれていたそうな。
そこに持ってきて浮気、息子の夫への評価は地に堕ちた。
それに、夫がいなくなれば、息子は我が家の唯一の男となるわけで。
母と妹を守るために、夫のことは敵だ、とみなさなければ、不安で立っていられなかった、らしい。
その日から、徹底的に、夫を避けるようになった。
かたや13歳の娘。
実は昨年は、思春期だったこともあり、夫の様々なところ(いつまでも赤ちゃん扱いすることや、しつこいところ、食べ方が汚いところ、すぐにすねるところなどなど)がいや!という気持ちが抑えきれず、正直不仲だった。
でももともとは、夫は娘を溺愛していたし、娘も夫が大好きだった。
自分が冷たかったからかもしれないと自分を責めたり(これは息子もそうだった)、鬱を患っていた夫のこれからをものすごく心配したり、それでいて自分を捨てる、苦労してきた母親を捨てる、そのことがショックだったり許せなかったり、
たぶん家族の中で一番、いろんな感情に苦しめられていた。
娘は、夫が家にいる間に一緒にしたいことリスト、なるものを、けなげにも作成した。
ごはんを作ってあげることや、逆に父ちゃんの得意料理をつくってもらうことや、お出かけすること、最後に買ってもらいたいもの。
鬱の夫のために、京都まで心の病に効くというお守りをいただきに行ったりもした。
そして、最後にほしいものを買ってもらうのと、好きなラーメン屋さんへ行くために夫と二人きりで出かけた。
その、翌日の朝。
部屋にいる娘から、ラインが来た。
「どうしよう、涙が止まらなくて起きられない」
私はあわてて娘の元へ走った。
娘は、夫が、自分と出かけている最中に女とラインしているのを見てしまったのだった。
その日から、娘は学校に行けなくなった。